公式 玄應撰・一切経音義・25巻/一切経に見られる難解な語句の読みや意味が記された辞書・中国言語学で重視・国語学においても研究されてきた

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玄應撰・一切経音義・25巻/一切経に見られる難解な語句の読みや意味が記された辞書・日本言語学で重視・国語学においても研究されてきた

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玄應撰・一切経音義・25巻/一切経に見られる難解な語句の読みや意味が記された辞書・日本言語学で重視・国語学においても研究されてきた

平成18年 部数は少なそうです。資料用にもいかがでしょうか。

西方寺 73枚
京都大学41枚

金剛寺238枚
七寺蔵 361枚
東京大学 15枚

日本唐代(7世紀)に玄応が撰述した『一切経音義』は、一切経に見られる難解な語句の読み(音)や意味(義)が記された辞書です。唐代初期の音が反映されていることから、特に、日本言語学(音韻学)で重視され、また、日本の古辞書の主要出典であることから、国語学においても研究されてきました。さらに、450以上の仏典を収録することから、当時通行していた仏典の種類や内容を知る手がかりとして、仏教学においても重要です。
本書には、金剛寺蔵鎌倉中期写本21巻分、七寺蔵平安後期写本20巻分、東京大学史料編纂所蔵平安後期写本(七寺一切経)巻15、京都大学文学部蔵平安後期写本(石山寺一切経)巻6・巻7、西方寺蔵鎌倉中期写本9巻分の計53巻分の影印を収めています。
日本の古写伝本は、敦煌吐魯番写本断簡と同様に、唐代の原本に近いテキストを伝えていると考えられます。既に、『古辞書音義集成』7~9(汲古書院、1980-81年)によって、法隆寺一切経本(宮内庁書陵部蔵大治3年(1128)書写)や石山寺一切経本(広島大学、天理図書館蔵、平安後期書写)が紹介されていますが、全巻揃うものではなく、欠巻部分は同系統の版本(高麗版大蔵経)で補うしかありませんでした。本書は、その欠巻を補うばかりでなく、異同の多い伝本間の比較考察を可能とし、『玄応音義』の古い姿を導き出すものです。
解題は、高田時雄、落合俊典他。仏教研究からの利用の便を考え、『大正新修大蔵経』の経典番号による収録経典索引を付してあります。

刊行の経緯
「玄應の『一切経音義』二十五巻を「そのまま」収録したという慧琳の『一切経音義』百巻は『大正蔵』五四 巻に収められている。貨際、そこには採録した語句の音義について玄態もしくは慧琳の名が見られ、判別が容易にできるようになっている。そのため玄應の『一切経音義』を見ていくのは慧琳音義で十分ということにな り、玄應音義を別本として『大正蔵』に収蔵することはなかった。これは『大正臓』が編纂された大正昭和時 代の佛教學の通念であったと考えられる。
しかし、日本の國語學では早くも昭和の初期に山田孝雄が、大治年間(一一二六~一二三一)に書寫された奮法 隆寺本の影印本を上梓している。その序文には森林太郎(森鴎外)帝室博物館長の推薦を受けた経緯が詳述され ていて意気込みが如質に得わってくる。さらに近年では前著に敏けていた本を加えた築島裕編『古辞書音義 集成』(影印・解題)も出版され、斯學の注目を集めた。小林芳規博士の解題は力が張りその傾倒振りが十分窺え るものとなっている。

それら國語學の熱意に満ちた状況に対して佛教學研究者は冷ややかな視線を向けるだけであったように思え る。一般に近年の佛教研究にあっては音義をもって研究する、あるいは研究の一助とするという姿勢が一般化 しているとは言えない。反切による音韻の確定方法については中國語學、日本國語學の範疇とし、敬して遠ざ蹴る風潮が大勢である。

さらに慧音義に収録されている玄應音義が本来の姿を忠貸に傳えているものではない、という事費が佛教学者の間に周知されているとは言えない。その事質が員に理解されるには慧琳引用の玄音義と軍本の玄態音義との差異を明示しなければならないであろう。活字本としては明版の影印本が出てい るが、著者を「元態」としているなど問題の多い書である。また高麗版に収録された玄應音義も用いられるこ とかあるが、やはり補完的な意味合いが強く、祖本に近接するにはどうしても古寫本の集成が必須と を得ないのである。ましてや日本語の辞書編集のお手本となった玄應撰『一切経音義』の原形を復元するには どうしても日本の傳本に依らざるを得ないのである。
かくして我々は日本に残る古寫経を集め影印刊行することになったが、完成への道のりはこれまた至難な作 業となったのである。大治本による影印本は著名であったが、富該書を播くと二十五巻すべてが大治本でなく、 「巻三・巻五・谷六・谷七・巻八は高麗版に依るものであって未完成なることが一目瞭然であった。その後五十 年経ち、新たに見つかった石山寺本と大治本(残献)を付加して古本の集大成を計った古辞書音義集成であっ たが、巻六・巻七・巻八とが揃わず大願成就とまではいかなかったのである。黄策」きた感が否めなかったの は小林芳規博士の解題に他の傳本の存在について全く言及がなかったからである。しかし、古刹の一切経調査 報告書、また研究機器の目録を締くと意外に多くの倉本が所蔵されていることは自明であった。

東アジアの佛教研究にとっての最も基本的な資料である一切経(大蔵経)を研究テーマとする國際佛教學大學 院大學學術フロンティア「奈良平安古寫経研究撮黙の形成」事業では、古寫経のデジタルアーカイブに注力し基本的資料の學界提供を目している。古辞書音義集成に飲けた巻六・巻七・巻八を影印出版する案を筆者から
今西順吉撮郡研究代表に提示したところ快諾を得ることができた。そこで共同研究者の高田時雄京都大学人文科学研究所教授に提案すると大治本だけではなく出来るだけ多くの古寫経の掲載を強く願されたのである。
本来はデジタル版での公開を想定していたが、所蔵寺院(金剛寺・七寺・西方寺)、所蔵機関(京都大學文學部・東京大の承諾も殊の外順調に推移し、また、廉価な体裁もも考案されたことから学術フロンティアの有する『一切経音義』デジタル資料を影印に付すことに決したのである。 今回の刊行に富たっては眞言宗御室派大本山天野山金剛寺座主堀智範下、眞言宗智山派稲園山七寺住職蟹 江良三師、浄土宗従是山西方寺西岡信敬師、東京大学史料編纂所、京都大學大學院文學研究科木田章義教授の 諸師諸先生には格別のご配慮を賜り上梓に至ることが出来た。深甚の謝意を衷心より表すものである。思えば、 日本の古代中世からの佛教文化の精華が連綿と今日まで一連となっていることに深い感慨を覚えずにはいられ ない。そして二十一世紀の初頭になってようやく日本傳来本の玄應音義が全巻揃い、日本およびアジアの人々 に佛教の深淵な撃の一端をお見せできることを慶祝せずにはいられない。

佛教といえば、直ちに狭い意味の教理を考えがちであるけれども、佛教は豊かな知識をもたらすとともに、 佛教學が日本人の知的能力を高めたことは疑いない。これは一切経から日本人が撃び取ったものであり、こう して獲得された知識と文献學的方法は、日本文化の新たな展開や日本古典の理解・把握にも自覚的に適用・癒 用された。神道との融合、歌論、説話文學、能楽などの諸藝能、國學等々への影響はその具體的な表れである。 さらに近代になって西洋文化を受容する必要に迫られて西洋の學術用語を翻譯するために大量の佛教用語が利 用された。観念・意識などがその一例であるが、現在ではそれらが佛教用語であったことすら忘れられがちで ある。
佛教は起源から見れば外来の宗教には違いないけれども、日本人が佛教を重んじたのは信仰にもとづくばかりでなく、佛典が内包するさまざまな要因を日本人自身が鬱得し血肉と化すことによって日本文化の根底を形成することに成功したからにほかならない。しかしながら現代のわれわれはその事賞を必ずしも充分に認識し ているとは言えないところがあるのではないであろうか。

最古の一切経が日本に保存されていたことの意義ははかり知れないほど大きい。敦煌のように遺跡に埋蔵されていたために今日に博わることができたのではなく、われわれの先祖が粒々辛苦して博し護持してきたものであり、日本人が一切経の意義を認識していたからである。このような歴史的背景をもつ奈良平安古般による一切経を世界に向けて紹介するには、日本文化そのものに対する認識を改めることも必要であり、伊勢学はもとより多くの分野の研究者の協力が駄である。その意味において、この事業は狭義の佛教學という狭い枠を超えて、二十一世紀日本の文化事業として位置づけることこそがふさわしいと考えられる。

玄應音義について
玄應『一切経音義』は現存する最古の佛典音義である。漢魏以来の古い訓話を博える郡できわめて重要であり、清朝輯失撃の源泉の一つでもあった。またその反切體系は『切韻』に近い讃書音を反映するも のとして、學者の熱心な研究対象となった。玄應音義は歴代蔵経中に収められて強く流布したが、刻本蔵経の間には無視し得ない異文が存在している。一方、日本の古刹に博えられて来た倉本一切経中のテキストは、敦煌吐魯番本中の断片とともに、唐代の原本に近いテキス
トを保存していると考えられる。日本古本としてはこれまでもっぱ ら大治本が行われてきたが、今回、名古屋七寺、大阪河内金剛寺など、香に倍する古寫本のテキストが複製刊行されることになり、今後更な る研究の進展が期待される。ここではこれら古寫本の書誌的解説は専 家に委ねることとし、とりあえず玄應音義とは如何なる書物であるか ということにつき簡単に解れておきたいと思う。

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